2004年度 食育プロジェクト

「食育講座」の準備にあたって

プロジェクトリーダー 松本 啓佑

今年度から装い新たに再出発した食育プロジェクトは、「食と農」の結びつきを強めるという観点から、私たちの食生活や食環境を見直すための家庭・学校・地域のネットワークづくりや、食育の実践に取り組んでいきます。最初に取り組む活動は、子どもたちを対象にした「食育講座」の開講です。

「食育講座」は、来年度から札幌市内および近郊の小学校五・六年生を対象に、年 8 回のコース (月 1 回の開講) の中で、調理実習や生産地見学、学習などを行う事業です。

この事業の目的は、子どもたちの豊かな心と食生活を育み、農業や環境に対する理解を深めることです。内容は大きく分けて、自ら食と健康について学び・考える力と、調理などの技能を身につける、旬の素材を調理して食べることにより、本物の味を知る、土や動植物などに触れる体験を通して生態系や環境について学び、「食と農」の関係や、「食べる」ことの意味を考える、というように、幅広いテーマを取り上げる予定です。

そのため、会場も調理実習室から農場、小売店舗など多岐にわたりますが、これは調理方法や技術を身につけるとともに、素材の持つ特性や栄養、農産物・食品が作られる過程について、生産・流通の現場で直接学ぶことで、体験を通して食と農に対する関心を高めることができるメリットがあるといえます。

今年度は、会場選定、予算編成、募集方法など運営に関わる準備が主な活動となりますが、当面は具体的なカリキュラムの作成と同時に、 8 ~ 9 月までを目途に会場視察や講師の選定および打ち合わせを行っていきます。 10 ・ 11 ・ 12 月にはそれぞれ 1 回ずつの試験実施を行い、そこでの成果と反省点をもとに実施体制を煮詰め、来年度の初めには受講生の募集を開始し、 2005 年 6 月の開講を目指します。

年間計画

プロジェクトリーダー 松本 啓佑

来年度から本格開講を目指している食育講座ですが、今年度は 3 回のコースでプレ開講します。

作り手の見える農水産物を自ら調理しながら、楽しく美味しい料理の方法や食生活のこと、生産現場のことなどを学ぶカリキュラムを用意しています。今盛んに叫ばれている「食育」も、子どもたち自らが食に積極的に関わっていくことが大事であり、そのきっかけ作りをこの講座が担えればと思います。

9 月から 11 月までの月 1 回の開講、対象は小学校 5 ・ 6 年生、3 回の講座は原則毎回参加となり、受講料は 5000 円です。(見学バス代、食材費などを含む) 日程と開講内容は左記のとおりです。

第 1 回 季節の野菜を使った料理教室と生産者のお話
日時 : 9 月 25 日 (土) 10 時から 15 時まで
会場 : 札幌市消費者センター食材研究室 (札幌エルプラザ二階)
第 2 回 牧場見学とバター作り体験 ※保護者参加も可能
日時 : 10 月 9 日 (土) 9 時から 15 時まで
会場 : 小林牧場 (江別市) 他
第 3 回 お米とお魚を使った料理教室と漁業関係者によるお魚講義
日時 : 11 月 6 日 (土) 10 時から 15 時まで
会場 : 札幌市消費者センター食材研究室 (札幌エルプラザ二階)

体験が育む子どもの食 -今年度の食育講座を振り返って

プロジェクトリーダー 松本 啓佑

9 月から毎月開講してきた「まるごと学ぼう食育講座」は、11 月 6 日の最終回で受講生一人ひとりに修了証が授与され、今年度の日程を終えました。

3 回連続のこの講座に参加したのは、札幌市内の小学校 3 ~ 6 年生の 10 人。普段から家で料理を手伝う機会がある子が多く、「料理が上手になりたい!」とやる気十分。

1 回目は、札幌市の栄養士・山際睦子さんの指導で、だしの取り方や野菜の切り方など料理の基本を学びながら、旬の野菜を使った豚汁とサラダ、牛乳かんを作りました。皆で作った豚汁と有機栽培の野菜のサラダは「甘くて美味しい」と格別の様子。その生産者は午後の講師である厚田村の有機農家・長良幸さん。長さんからは土の仕組みや微生物の働き、農薬の話などについて教わりました。子どもたちは、長さんが畑から持ってきた土に触りながら、「野菜も土の中で生きている」と実感したようです。

2 回目は、マイクロバスを使い江別市の小林牧場を親子見学しました。到着してすぐ、牧場の小林ヨシ子さんが「今朝搾った牛乳を飲んでほしい」と、大鍋に牛乳を用意してくれました。濃厚な脂肪膜を見た子どもたちは恐る恐る口をつけましたが、すぐに「甘い、美味しい!」その後、 美味しい牛乳は牧場でゆったりした環境で草を食べる牛から、草は元気な大地が育てることを教わりました。牧場では雌牛を育て、雄牛は肉牛になると聞いた後、牛舎で偶然生まれたばかりの雄の仔牛と対面した子どもたちは、生命の尊さも学びました。午後はサツラク農協さんの指導でバター作りを体験し、汗をかきながら振り続けて出来たバターを大切に持ち帰りました。

3 回目は、門別町の漁師・石崎忠幸さんに、朝に揚がった鮭を目の前でさばいてもらい、一尾を余すところなく使った鮭のきのこソースと三平汁を作りました。鮭の内臓を取り出し三枚に下ろす場面では、はじめ悲鳴も上がりましたが徐々に慣れ、イクラを取り出したときには歓声へ。石崎さんからはオス・メスの見分け方、骨ガラの栄養、鮭の放流、漁の仕方、漁師の生活、植林の必要性や川にゴミを捨てないなど海の環境保全についての話を聞きました。「魚が苦手だったけど、漁師の人ががんばって釣った魚だから私もがんばって食べる」という子もいました。

今年は準備の段階から手探りの感は否めず、企画や運営など多くの面で課題を残しました。それでも、毎回作り手の分かる食材を使った調理実習と、生産現場の話や見学を組み合わせることで、子どもたちの料理や食べ物、自然に対する興味を引き出すことができたのは大きな収穫でした。「次は牛乳工場に行ってみたい」「野菜や魚に興味が湧いてきた」という子どもたちや、「子どもが料理を家で作ってくれた」「来年の講座も楽しみ」という保護者の方々の声を励みに、来年の本格開講に向け準備を進めていきます。

最後になりますが、各回の講師の方々と、食材や会場を提供して頂いた関係者の皆さんに心から謝意を表します。

一年目の食育講座を終えて

プロジェクトサブリーダー 秋山 寿磨子

2005 年度に本格的事業となる食育講座は、 2004 年度の反省を元に準備が進んでいます。具体的な反省点と来年度で改善されるべく検討中の事項についてご報告します。

まず、 2004 年度、 3 回という少ない回数であっても全てに出席することを受講条件とするのは難しいということがわかりました。当初の「全カリキュラム出席のみ修了とみなす」考え方では現実的でないことがわかったのです。 2005 年度からは参加者が回数と時期をある程度選択できるよう配慮し、気軽に受講しやすいシステムを考えています。

講座内容については、 2004 年度は料理の基本や食品の知識を重視した結果、基本的な生活マナーの学習が徹底されなかった点が反省されました。そこで「食育学習への心構え (ゴミの分別や食器の洗い方含む) 」を学習内容に組み込むことに。また見学学習では自らも作業を体験する他、 2004 年度に取り組めなかった流通などの分野にも目を向けていこうと思っています。

新たな試みとして来年度からは受講生をグループ分けしリーダーを決め、グループ学習や自主研究、発表の場を設けてはどうかと考えています。小学 3 ~ 6 年生の参加者にいかに緊張感を持続させ、主体性ある学習の方向づけを進めるかが課題となります。運営では受講生募集方法を検討し、受講申し込みの増加を見込む予定。また、スタッフは各自の専門を生かした役割分担をし、メーリングリストを活用してすみやかに連絡を取り合うなど、参加者や保護者が安心して学べる環境作りをしていくことを第一と考えています。来年度食育講座は本格始動一年目です。実際にやってみるとまだまだ改善の余地が出てくることは必至と予想されます。ただ今年度、受講した子どもたちが、みんな真剣に学び、家庭での食のあり方にも良い影響が出たことは大きな収穫でした。息の長い事業に育てていく為にスタッフ一同、努力を惜しまず取り組んでいきたいと思っています。

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