あにふく学習会『アニマルウェルフェア はじめの一歩』

 10月14日、帯広畜産大学畜産学部の瀬尾哲也准教授が、主に乳牛の飼われ方と国のアニマルウェルフェアの指針について話ました。参加者は10名でした。
 牛は約45㎏で生まれ、2か月間粉ミルクを飲み、14~16か月で人工授精する。妊娠期間は人と同じ10か月ほど。出産を経て乳牛になる。10か月乳を搾り、2か月休み次の出産を迎える。乳牛の飼い方はつなぎ飼いが7割、フリーストールが2割、放牧が1割。牛の本来の寿命は20歳くらいだが、3~5産したら屠畜される。生まれた子牛がオスの場合は肉牛として売られる。
 国は2023年7月にアニマルウェルフェアの指針を出した。今まで畜産技術協会の指針はあったが、農水省としては初めてで、目的は輸出拡大を図るため。実施が推奨される事項を挙げているが、強制力もなく罰則も無いので取り組みが進むかは疑問。指針では、牛の様子を観察・記録する、牛の取り扱いは丁寧にする、搾乳は静かで思いやりのある方法でとなっている。また、除角は早い時期に麻酔や鎮痛薬を使って獣医にお願いするか2か月以内に焼きゴテで焼く。断尾はしないように、蹄の管理は立ち姿、歩き方を見て年1回は削蹄する。繁殖は人工授精や受精卵移植の際はストレスを与えないようにする。分娩はきれいな乾燥した、保温できる所で産ませる。牛舎の清掃・消毒をしっかり行う。子牛は個別に飼うが寂しくないように他の牛の姿を見られるようにする。子牛にはバケツでなく哺乳瓶で乳を与えるが、穴は小さく長く吸えるようにする。粗飼料を多く濃厚飼料は少なめにし、飼料・水の品質を確保し、十分な広さで摂取できる様にする。牛舎はコンクリートなら敷料を敷き、ワラやゴムマットで寝やすいようにする。つなぎ飼いでも放れた状態で運動が十分できる状態にする。フリーストールでは少なくとも1頭当たり1ベッドは用意する。放牧では通路がぬかるまないようにする。乳牛は10℃~20℃が快適なので暑すぎないよう散水や扇風機を使うなどする。糞尿からは硫化水素が発生し人にも危険なので換気を十分にする。アニマルウェルフェアの状態を示す指標として牛の行動、病気、ケガ、受胎率、外観や人との関係もチェックするなどの事項が挙げられている。国の指針は、アニマルウェルフェア畜産協会の作った基準と比べると具体性に乏しい部分もある。(例えば舎飼いの牛の敷料をAW畜産協会では5㎝以上としている)

 会場からはAW畜産協会の認証制度について質問がありました。乳牛では12農家と6工場がアニマルウェルフェア認証を取得していて間もなく肉牛の認証も発表できることが知らされました。多くの鶏が鳥インフルで殺処分されたことから、鶏の飼育についての質問もありました。パンフレットにあるように鶏は密飼いが多いため感染が広がりやすいと説明がありました。牛の飼料については品種改良で大型化しているため濃厚飼料を与えないとやせていく実態も話されました。

 参加者のアンケートからは「少人数で話し合いしやすい雰囲気で良かったと思います」「わかりやすい内容でした」「参加して大変参考になり良かったです。勉強になりました」「買わない勇気、選んで買う勇気を実践したいと思います」「前回のアニマルウェルフェアに参加して瀬尾先生のわかりやすいお話、今回もまた素晴らしいお話で、次回は豚や鳥のアニマルウェルフェアのお話もお聞きしたいです」「アニマルウェルフェアの指針についてよくわかりました。具体的内容はもっともな事項ばかり、国として真正面から取り組んでいくことが大切」「卵は以前は貴重なものだった時代もあったと思いますが、さまざまな代償により成り立っていたのかと知りました」の声が寄せられました。

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