採卵鶏のアニマルウェルフェア

 12月11日に札幌のかでる2・7で採卵鶏のアニマルウェルフェアの学習会を開催しました。参加者は12名でした。
 始めにあにふくスタッフの小池香織さんが、取材した生産者の飼育状況を報告しました。卵ラン農場ムラタさんもThe北海道ファームさんも、鶏たちは止まり木のある広い鶏舎でのびのびと生活している様子が紹介されました。


 その後帯広畜産大学の瀬尾哲也准教授が採卵鶏の一般的な飼育状況について話しました。

 大学生が4本足の鶏の絵を描いた話の紹介からクイズ形式で話を進めていきました。鶏の寿命が本来は10年ほどあることや電信柱の上の方まで飛べること、鶏に歯はなく砂肝が歯の役目をしている事を紹介しました。卵の殻の色は品種の違いによるが、消費者は茶色い殻の卵を選ぶ。黄身の色はエサの色でかわり、栄養価に関係ないが、黄色が濃い方が栄養があると考える消費者が多い。鶏は抱卵中は卵を産まないため、品種改良で卵を温めなくして毎日卵を産ませるようにした鶏もいる。鶏は仲間を識別しているがヒエラルキーがあり上位が下位をつつくなど厄介な性質も紹介されました。卵はフンと同じ排泄腔から出るので糞で汚れることもあることや卵のサイズは月齢によるもので産み始めは小さいことなども説明しました。

 飼育状況での問題は90%以上で行われているバタリーケージ飼育、雄鶏処分、ビークトリミング、強制換羽などです。

 EUでは2012年に禁止されアメリカでも禁止の動きがあるバタリーケージは、1羽当たりの面積がB5の紙の大きさ程度しかなく、糞が落ちやすいよう床が金網なので足に血まめ状のものができるなど鶏に与えるストレスが大きい。止まり木や巣箱があり、砂浴びできる広めのエンリッチドケージにすると飼育羽数が減るので、卵の価格も高くなる。鶏の行動の自由と安価が対立するが、ウォルマートやコストコなどの流通大手やスタバ、マックなども2025年までにケージフリー卵にすると宣言、投資家もアニマルウェルフェアを意識してきている。韓国でも飼育状況を卵にラベル表示している。日本はアニマルウェルフェアに関して明らかに遅れている!オスひよこの処分は、生きたまま粉砕したり焼却したりしているが、孵化前に性別判定して処分するよう求める国も出てきていて、孵化前に性判別する技術も開発されつつある。鶏は新しい羽毛に置き換わる時期があるが、自然に任せていると産卵率が落ちるので、1週間ほど絶食させて強制的に換羽させ、産卵率を早く回復させる。鶏には強いストレスがかかり、免疫力が低下する。アメリカやカナダは絶食による強制換羽は禁止、栄養価の低い餌を与えて換羽させている。

 飼育方式別の利点と欠点に関して説明がありました。ウインドレス鶏舎やバタリーケージの利点は管理しやすい、生産性が高い、コストが安いなど人間にとっての利点でした。鶏は行動が制限されストレスはこの上ないと思われます。ケージ飼いでも広さを3倍にしたら手間が1.5~2倍かかり、コストに跳ね返ります。ケージフリーの卵を買う人が増えれば生産者も変わる。消費者の買い物(投票)次第と瀬尾先生は話を締めくくりました。

 質疑応答では、平飼いの卵は1個50円以上することや、昔ほとんどの農家で鶏を飼っていたが農家が減って大規模農場が増えた事、EUではAWに価値を置く人が多いが日本では栄養や味に興味が行く人が多いことなどが話し合われました。
 終了後のアンケートでは「安さ、品質に特化した流通問題を痛感しました。鶏の『いのち』の在り方を知って価値を示すことが大切かと思います」「大変勉強になりました。知らないことが多すぎます。学校の教育、マスコミの役割などをもっと重視すべき。先日の『クローズアップ現代』の結論は『消費次第』という事でしたか?生産者、流通、報道、政治の感度と行動が問われていると思います」「適正価格は難しいと感じました。人の欲望は限りなく安ければ得という考えもあるが生命をいただくという視点において、卵がどのように育てられているかを考えて買う行動につなげたい。平飼いかケージかの2択ではなく、鶏の生態、行動に即した飼育が必要なのだということが今日の講演でわかりました」などの意見が寄せられました。

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