乳牛のアニマルウェルフェア~リレートーク

 2021年11月13日にZoomを使用したオンライン学習会を開催しました。参加者は17名で道外からの参加もありました。

山根百合奈さん

 初めに帯広畜産大学の大学院生の山根百合奈さんから話を聞きました。

 小さい頃から動物好きで祖父の家には家畜もいたが、牛は身近にいなかった。「羊のショーン」の世界観にあこがれて帯広畜産大学に入った。農家でバイトするために大学で「うしぶ」というサークルに入り搾乳するようになった。搾乳のバイトに行った時、牛をける農家があり衝撃を受けた。牛がつながれたままで大変な生活をしていることを知った。瀬尾先生の研究室でアニマルウェルフェア(AW)の審査を見学した際、先輩が農家さんにアドバイスしているのを見た。AWの審査により牛のくらしが改善していることを実感した。自分も参加できたらとAWの審査について学ぶようになった。自分も安いものを買ってしまいがちだが、AW普及のためには消費者の力が重要と考える。海外でも消費者の力が大きかった、と下のようなスライドを使って話していただきました。

瀬川綾子さん

 次にあにふくくスタッフの瀬川綾子さんから消費者として話をしていただきました。

 新潟の動物愛護団体で活動していたのでAWに興味を持った。乳牛は生後2年半で出産してから300~330日ほど搾乳をし、2か月ほど搾乳しない期間(乾乳期)を経て、次の出産となる。たいていは3産ほどで廃用牛となる。乳牛の飼い方は主に舎飼いと放牧で、北海道は放牧のイメージが強いが放牧しているのは10%未満。日本は1頭当たりの乳量を向上させることに力を入れてきた。AWの5つのフリーダムはペットで置き換えたら解りやすい。

 どんな動物にも心があって知能も高い。北海道は家畜が幸せに暮らしていると思っていたが、そうでもない現実を知った。抗生物質の使い方にしても耐性菌が出現するなど問題がある。

 見学した農場はAWに配慮したところが多く、家畜が健康で、病気の発生が少なくなり、人も楽になり、時間、経済的にも余裕が出ることを知った。人の健康と動物の健康は一つ〝One Health”という考え方に共感する。消費者としての選択は投資。AWの需要を増やすことを心がけたい、と多くの写真を使って話しました。

 次に大樹町にあるAW実践牧場の株式会社坂根牧場代表取締役の坂根遼太さんから話していただきました。

 80haの農場で経産牛90頭と育成牛70頭を父母、従業員1名と飼養している。妻はチーズの加工をしている。出荷乳量は年約900t、1頭当たり乳量は年約9000㎏。2016年から「乳life」として販売開始、2017年からはAW認証マーク付けて販売。AWを目指したのは乳製品に付加価値つけたかったから。放牧とフリーストールで簡単に取れると思ったのに1回目の審査は不合格だった。動物ベースの点数が悪かった。足の悪い牛が多い、擦り傷、第4胃変異、牛の逃走反応を指摘された。足の悪い牛は全頭治療した。自分で気づかない牛も審査で教えてくれる。悪い状態を放置しないことが大事。首の後ろに擦り傷がある牛が多かったので、スタンチョンやバーの位置を変えて首に当たらないようにした。

 牛の逃走反応についてはとりあえず優しくする、怖い思いをさせないことを心がけた。第4胃変異については濃厚飼料を減らしたが、乳量が減るので草の栄養価を高めるよう努力した。放牧地までの牛道にバンクズという小さい礫を入れぬかるまないようにした。水槽は汚れたら洗う。AWは5つの自由がベースにあるが人間が家畜目線になることと思う。審査で気づくことが多かった。良い環境を作ると生産性上がる。牛のケガや病気が減ると治療時間減って自由時間増える。

 認証牧場へのアンケートでは、皆家畜のために認証取ったが、従事者の為に取ったと答えた人も半数いた。皆牛に快適な環境を作ることに配慮している。認証取ってよかったこととしては、牛に対する意識が変わった、助言を得られモチベーション上がった、などが挙げられた。AW認証は簡単に取れるかはわからないが挑戦する価値はある!幸せな家畜、農業者が増えることを願いながら坂根さんは話を終えました。

 質疑応答では、販路についてや、学生のAWに対する関心、消費者の知見を高めるための方策などの質問がありました。日本政府がAWに積極的でないことも指摘されました。


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