肉牛の育つ環境と流通について

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6月29日に21名が参加して牛の育つ環境と流通について学びました。

初めに帯広畜産大学准教授の瀬尾哲也氏から肉牛のアニマルウェルフェアについて聞きました。

アニマルウェルフェアとは家畜の肉や卵を利用するが、家畜も感覚を持った生き物なのだから、屠殺までの全期間でできるだけストレスを抑えた飼育をするというもの。肉牛の飼育方法には、つなぎ飼い、放し飼いがある。肥育牛の5%、繁殖牛の35%、搾乳牛の73%はつなぎ飼いされている。放し飼いは牛舎内でつながないで飼育するフリーバーンやパドック(運動場)に一定時間出す飼い方や放牧がある。放牧にすると草を食べるため肉の脂が黄色くなり、運動量が多いためサシが少なく赤身の肉になる。格付けでは脂の色は白いほど良いとされ、黄色い脂では肉の値段が安くなってしまう。脂の色でおいしさは変わらず見た目だけのことなので、サシで評価するよりアニマルウェルフェアで評価できるようになるといい。

今肉牛のアニマルウェルフェア認定基準を作っている。例えばエサのビタミンAを制限しない。ビタミンAを制限すると、サシが入りやすくなるが牛の目が見えなくなったり、足が腫れて起立不能になることもある。体のきれいさや、外傷のある牛が20%以下であるか、皮膚病はすぐ治療しているか、病気、死廃事故頭数もチェックする。また、舌遊びや異常なめなどの異常行動がないか、牛舎の牛については人なれしているかもチェックする。施設についてはエサを食べるスペースが十分あり、エサを食べられない牛がいないかどうか、日陰や扇風機など暑熱対策ができているか、分娩房が清潔か、水槽がきれいか、放牧の場合も時間、エサや水が十分か見る。除角や去勢、削蹄の仕方やミルクの与え方なども審査項目とする。様似町で32頭の牛を放牧している生産者の「完全放牧野生牛」の肉はジビエのような味と評判になっている。

次にコープさっぽろ畜産部バイヤーの小野寺圭史氏から「流通・販売の現場から見た牛肉の話」をお聞きしました。

コープさっぽろで売れている肉は豚肉30%、鶏肉16%、牛肉15%、あとは羊肉など。売れる牛肉は輸入が7割で国産は3割ほど。ホルスタインなどの国産牛肉が輸入牛肉の約1.5倍、和牛はさらにその1.5倍と価格差があることが大きいと思われるが、盆・暮れ・正月などハレの日には和牛が売れる。国産牛肉は「牛トレーサビリティ法」で個体識別番号が付けられていて、ネットでその牛の生産履歴を知ることができる。(実演)

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オーストラリアの牧草飼育の牛の肉を脂が黄色いことをアナウンスしながら売ってみたことがある。脂の色は白でも黄色でも特徴ととらえられたら良いと思う。上川高原牛や士幌高原牛の赤身ステーキを販売した時は「思ったほど固くないね」と言われた。平飼い卵のように飼い方に注目した売り方をしていけると考えている。

参加した方からは

「動物の自由はずっと気になっていました。もっと知り、そして自らも発信していくことが大切ですね。」

「肉牛の消費者の意識を変えることは難しそうだと思いました。」

「完全放牧野生牛」はストレスのない本来あるべき姿なんですね。トレーサビリティの情報も詳しく知ることができました。個体識別番号で追跡してみたことはなかったです。流通、販売の現場の事がわかりました。」

「牛の育て方がより評価の対象となるような格付け基準が作られるべきだと思います。放牧飼育の牛肉をスーパーで買えるようになってほしいです。」

「『アニマルウェルフェア』を世の中に広める活動から始めていかなければということを一番に感じました。A5の認識に驚きました。」

「生産者の方にメリットができる仕組みづくりも何かできていけば、購入者の私たちもこちらを買おうと思える何かが1日も早く見つかってほしいと今日は思いました。」などの意見が寄せられました。

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