2000年度 大豆プロジェクト

「えだ豆を植えよう体験交流会」報告  ~えだ豆の種蒔きができなくても~

そうなんです。 5 月 14 日 (日) は小雨、しかも前々日からの雨で地盤が悪く、当日は種蒔きが中止になってしまいました。が、しかし 52 人もの人がしっかり開始時間に集合したのです。そこで代表の松下さんが機転をきかせて、ハーブの種植えを兼ねたガーデニングの講習会に内容を変更しました。ホッ! 。参加者の人達はハーブの種 2 種類をポット植えし、畑やガーデニングについて色々教わって、それなりに有意義な時間を過ごせたようです。おまけにポット植えをした苗を、一ヶ月後の草取りにもらえるおまけもつきました。

お昼はおからのコロッケなど入ったお弁当や、交流会でコメントをもらう、豆腐や油揚げなどの製造業者であるマル美エンドウフーズの遠藤一彦さんが提供してくれた北海道産大豆で作った冷やっこ (これがとてもおいしい) 、中沢牧場の牛乳でお腹は満足満足でした。

後はちょっと眠くなりつつも、遠藤さんの北海道産の大豆で作った豆腐はとてもいいが、価格や色々な面で難しいといった話や、松下さんのかつて石狩管内で 5000 人もいた青年部員が現在では 800 人しかいないといった後継者問題が話されました。

参加者からもたくさんのお話が聞けました。北海道新聞編集委員の日浅尚子さんからは、先進国と言われている国はほとんどが輸出国であるが、日本の食料自給率の低さは、後進国と言われている土地の問題や戦争などで食べ物を作れない国と同じ位しかない。このままでは将来非常に心配であることが、問題提起されました。それを受け、拓殖大元教授の塩沢照俊さんから、工業製品を売るかわりに、食料を輸入してきた日本のありかたが現在の自給率の低さにつながっているということが話されました。

また、参加者から輸入野菜の農薬の心配を質問された時、これも塩沢さんから、国産の野菜との絶対的な違いは輸入国につくまで日保ちするよう収穫後にまかれる農薬 (ポストハーベスト) で、だいたい腐りやすく虫がつきやすいはずなのに、店頭に並ぶころまでそのままの状態でいるのがおかしい。あの大量の薬付けを見たら私は食べられませんよ、とお話しいただきました。

参加者からは、「じゃあいったい私たちはどうしたらいいんだ」 といった質問も出て、一同うーんといった状態になりましたが、今出来る事は、こういった現実を知り、まずは消費者の私たちが北海道で取れたものにこだわって食べていく事、そしてそういった人を増やしていくことではないだろうかといった話し合いになりました。そして、草取りなどの今後のスケジュールを確認し、大豆トラストの参加呼びかけをしてこの日は散会となりました。

ちなみにこの日出来なかった種蒔きは一週間後の 14 日に再び参加出来る人ですることになりました。

最初の種まきが雨で出来なかったので、 5 月 21 日再度行った枝豆の種まき、皆さん都合をつけて参加され、総勢名いい汗をかいて楽しく作業をしました。さすが手まきと言うかぜんぜん芽が出ていないところや、枝豆の伸びかたのまばらさがおもしろく、蒔いた人の個性がなんか出ているようでした。 6 月 18 日の草取りにも暑い日でしたが 13 名の方が参加され、皆さんがんばって草取りをしていました。たった 2 時間あまりの作業でしたが、腰が痛くなる人が続出し、改めて農作業の厳しさを実感しました。

その後も順調に草が伸びすぎて、 7 月にはいってまもなく 「このままでは枝豆が草にやられてしまう! 」 と畑の提供者の松下さんから電話が入り、予定外の草取り第 2 段が行われました。あんなにきれいに取ったはずなのに、しかも 3 週間位しかたっていないのに、すごい草でした。プロジェクトメンバー、事務局、一般のえだ豆参加者が時間の都合をつけて草を取ってきました。

お天気も良すぎるくらいいいし、後は 8 月 26 日の収穫祭を楽しみに楽しみに、待つだけです。

8 月 26 日 「えだ豆収穫祭」報告  ~やっぱり雨だったえだ豆収穫~

天気予報通り、えだ豆収穫祭当日は朝から雨…。スタッフは手分けして参加予定者に雨天決行の連絡をして、江別の松下代表の畑へ向かいました。

雨具をしっかり身につけた 14 名の皆さんが全員集合し、午前 10 時 30 分から収穫作業を始めました。雨に濡れながら、鎌で刈り取る人、それをコンテナにつめて運ぶ人と、スムーズに役割分担して作業を進めました。あいにくの天候で、泥だらけになりながらの収穫作業。不満の声が出ないか心配しましたが、皆さん真剣そのもの。ある程度刈り取ってから、畑近くの作業場でえだ豆のさやをはずし、大きな袋にいっぱい詰め込みました。作業をしながら、種まき、暑かった草取りのこと、子供のころの田舎の話に花が咲き、ほのぼのとした時間が過ぎました。

約 1 時間の収穫作業を終えたころ、空に薄日が差してきました。予定を変更し、焼き肉の炉を倉庫から外に運び出して、とれたてのえだ豆と野菜、おにぎり、ラム肉等を囲みながら、収穫祭を始めました。「甘い」 「おいしいね」 「本物の味だ」 そんな参加者の声に、スタッフもほっと胸をなで下ろしました。

お腹がいっぱいになるころには、さっきの雨がうそのように、太陽が照りつけ、暑いくらいになりました。えだ豆収穫の充実感と、おいしい食べ物でお腹も満たされたところで、今回の 「えだ豆を植えよう体験交流会」 に参加した感想を一言ずつ伺いました。色々な感想が出されましたが、種まき、草取り、収穫と、農家の仕事の一端を体験することで、「食」 と 「農」 の大切さを実感したようです。また、自給ネットの会員であり今回の収穫祭に参加された塩澤さんからは、大豆の需要と生産に関する情報提供をいただき、農業体験を通して農業に関心を持ってもらうという、今回のプロジェクトの目的が達成されました。

さらにうれしいことに、この日 3 名の方が、新たに北海道食の自給ネットワークの会員に加わり、 6 名の方が大豆トラストに参加して下さいました。

雨と雑草に悩まされた 「えだ豆を植えよう体験交流会」 でしたが、「雨降って地固まる」 のことわざ通り、参加者の方々の農業理解も深まり、新しい会員を得るなど、実り多いものとなりました。

最後になりましたが、松下代表のご家族には、この活動にたいして格別のご理解、ご協力をいただきましたこと、スタッフ一同厚くお礼申し上げます。

「大豆トラスト」報告

枝豆植えと平行して、大豆トラストの募集を行いました。新聞に大きく取り上げられたせいか主旨に賛同して大勢の人から申し込みがありました。全部で 84 名、 156 口 (312kg) で、遠くは東京からも申し込みがありました。来年以降も続けてほしいと言う声もあり、思った以上の参加人数や期待の大きさに、プロジェクトメンバーは感激するとともに、今後の展開への責任と、希望を感じるものでした。

8 月の始めにトラスト大豆生産者の松下さんの書いたファームレターを同封して、具体的な申し込み方法を書いたお手紙を、発送しました。今回は大豆を生豆だけでなく、味噌にして渡す方法も取り入れました。皆さんに大豆を渡せるのは 11 月です。楽しみですね。

また 11 月 26 日 (日) には、大豆を使った料理のパーティーも予定しています。

どうも盛りだくさんで欲張りすぎた大豆プロジェクトでした。

11 月 26 日 「大豆パーティー」報告 ~最後もやはり雨だった~

五月の種まき、八月の枝豆収穫となぜか雨に縁がある大豆プロジェクトの行事は、最後の大豆パーティーも予想どおり (?) で冷たい小雨が朝からぱらつく 11 月 26 日、スタッフを含め 35 名の参加のもと、札幌のレストラン 「プレヴェール」 で開催されました。

今回のパーティーの目的は、輸入品ではなく我々が育てた大豆のおいしさを知ること。大豆料理を味わうことはもちろん味噌づくりや豆腐づくりの加工実習もおこなわれました。まず初めは、岩見沢の生産者井上さんによる味噌づくりです。当日は朝から大豆を煮たり、それに糀を加えて混ぜ合わせたりと井上さんは準備に大忙し。パーティー開始後は出席者にも手伝ってもらい、味噌玉ができあがりました。これを春まで熟成させるそうです。

次いで、マル美エンドウフーズの遠藤部長による寄せ豆腐の製造です。やわらかトークの遠藤さんの説明に引き込まれつつ、型に流し込んだ豆乳が固まるのを待ちました。こんなに簡単に豆腐ができることは驚きでしたが、一日だけでは製造できないので前日から準備をしたそうです。

二つの実習が終わり、いよいよ鈴木シェフによる大豆や道産品を素材とした料理の登場です。松下代表のところでとれた薩摩芋のスープ、道産小麦のスパゲティ、大豆コロッケなど、一流シェフの味に舌鼓をうちながら各テーブルで交流の輪が広がりました。宴も佳境に入る頃大豆に関するクイズタイムもあり、豪華景品を目指して皆さんアルコールでマヒしかけた頭をフル回転させていました。

パ-ティーの終わりで井上さんが語りかけました。「人間て何ですか? 人は動物、動物も植物も身近で利用できるものを利用している。だから我々の住んでいるこの北海道の道産品を使いませんか。それが無理ならせめて国産品を。」 との訴えは重くずっしりとひびきました。常日頃言われている身土不二そのものです。

海外から安い農産物を湯水のように輸入する日本。 ○○パーティー、△△披露宴などの席に並べられる溢れるばかりの料理。そして後には残飯として捨てられるだけの山のような食べ残し。挙句の果てには、輸入品はやはりまずいなどと平気で口にする国民。傲慢以外の何ものでもありません。確かに安い農産物の輸入は、価格面では消費者にメリットがあるかもしれません。しかし、いつまでも輸入できる保証はないのです。最近は、このような状態をおかしいと感じている日本各地の消費者や生産者が共同で、大豆を植える運動を起こし始めています。食の自給ネットの大豆プロジェクトは、参加者が百名足らずとまだ小さな動きかもしれません、でもこの小さな波がいつしか大きなうねりとなり、安全な国産大豆生産の一助にと願わずにはいられません。これからも頑張りましょう。継続は力なり、です。

最後になりましたが、大豆加工の実演を心よく引き受けていただいた井上さんと遠藤部長に、またお休みにもかかわらず雰囲気の良い会場作りをし、腕によりをかけた料理を提供してくださったプレヴェールの鈴木シェフとスタッフの方々に厚く御礼申し上げます。

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