食の自給フォーラム 2011

いのちのつながり―身近な暮らしから広がる生物多様性の危機―報告

共催 (NPO法人さっぽろ自由学校「遊」・環境NGO ezoroc)

201会場風景2010年10月に名古屋で生物多様性をテーマに、COP10とMOP5が開催されました。
世界に、そして日本に広がる生物多様性の問題は、今や待ったなしの危機的状況にあります。食の自給ネットワークのフォーラムでも生物多様性に取りあげたいと考えました。今回は新しい試みとして、NPO法人 さっぽろ自由学校「遊」、環境NGO ezoroc(エゾロック)、NPO法人 北海道食の自給ネットワークの3団体で実行委員会を作っての取り組みでした。
第一部「生物多様性と食と農」とは
講師の科学ジャーナリストの天笠啓祐さんから生物多様性全般についての基調講演から始まりました。生物多様性の重要性は失ったときにわかることを、インド洋のモーリシャス島に生息していたドードーや米国イエローストーン国立公園でのオオカミなどを例にとって、ひとつの生物種の滅亡は、その生物種が滅びるだけでなく、それに依存する他の生物種の滅亡へとつながる事例。生物種の多様性は病気や環境変動による種の絶滅を防ぐという生物種として生きのびるための知恵であるが、遺伝子組み換え作物の生産地域は、広大な農地に均一の作物を作るため、ここでも農産物の多様性を奪っていること、メキシコを原産地とするトウモロコシの原種が遺伝子組み換えトウモロコシの遺伝子汚染によって失われつつあること。地球温暖化と生物多様性の密接な関係について、ブラジルで進んでいる、生物種の宝庫である熱帯雨林の大規模な伐採による二酸化炭素を吸収する力の激減、さらに切り開かれた森林の跡に広がる均一作物(遺伝子組み換え大豆)の畑。世界中で危機的状況にある生物多様性について具体的にわかりやすく話してくださいました。
また生物多様性の問題は南北問題でもあることについて、開発途上国や先住民族が長年利用し保護してきた民族の知恵を先進国や開発企業が略奪する構図。持ち出した遺伝子資源によって得られた利益が配分されないこと。マダガスカルの熱帯雨林に生育するニチニチ草、南大西洋にある火山群島の英領トリスタン・ダ・クーニャの住民の血液を研究して見つけられた喘息の遺伝子、西アフリカのベリー類の甘み、コチニール色素など、持ち出して研究して特許を取って、原産国にまで特許使用料を請求するなどの問題がある。
COP10、MOP5で話し合われたこと、どんなことが決まって課題は何か?なども話していただきました。会議で取り上げられた内容が本当に多岐に渡っていて、今回の講演の時間が十分でなかったのは残念でした。

2011フリートーク「暮らしの中から見直そう」
第2部は「身近な暮らしから広がる生物多様性の危機」と題して、天笠啓祐さん、ひがしリサイクルサービス 東龍夫さん、環境NGO ezoroc(エゾロック) 北寛子さん、三者のフリートークをコーディネーターNPO法人北海道食の自給ネットワーク 大熊久美子さんで行いました。
生物多様性という言葉から考えるイメージについて、それぞれ話してもらうことからスタートしました。自然界の細菌や微生物と共に生きている、細菌や微生物がいることで自分が生かされているとかんじる。自分が所属する団体に出入りしている人たちを見てほんとにいろんな人がいると感じる。毎日3度の食卓の食品を見てたくさんの命をいただいて自分が生きていると感じる。いろいろな場面での多様性がまさに生物多様性とともになりっている。天然由来のヤシ油で作られた洗剤、バイオ燃料としてのパームヤシ油、これらについてはマレーシアやインドネシアの大規模なプランテーションでの生産に頼っているため、熱帯雨林破壊とセットであること。携帯電話に使われているレアメタル「タンタル」の産地とコンゴのヒガシローランドゴリラの生息地が重なっているためゴリラが減っていること。便利な暮らしを支えている電気についても、建設が予定されている上関原発は万一稼動されれば放射線はもちろん温排水を海に流すことになり海水温度が上昇、豊かな生物多様性が保存されている周防灘に危機をもたらす。など私たちの暮らしの中にも生物多様性と関わりあうことがたくさんあり、知らないで過ごすのではなく、知って使い方も考えるなど私たちが出来ることも多いと感じました。天笠さんが「私たちは一日に3回も生物多様性について考えるチャンスがあります。」とおっしゃったのが印象的でした。

 

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