食の自給フォーラム 2000

「とりもどそう北海道の食と農~地産地消と地元から広げる農業活性化~」

2000 年 2 月 19 日、北海道食の自給ネットワークの今期活動を締めくくるフォーラムが、札幌駅南口広場地下街アピアにあるライラックホールで開かれた。

今期フォーラムのポイントは、理念や抽象的な話ではなく、実際に地産地消をおこなっている方の実践報告を聞き、地元から起こす自給力向上の動きを考えるという事。

コーディネーターには札幌大学経済学部教授の岩崎徹氏、パネラーにはサツラク農業協同組合、前組合長の黒澤信次郎氏、北見市でスーパー「フレックス」を経営する川崎克氏、長沼町でレストランを経営する仲野満氏。以上の皆さんで地産地消の事例報告、そして客席を交えたディスカッションをしていただいた。

午後 2 時。参加者 120 名で、ライラックホールはほぼ満員となった。司会は事務局長の大熊が担当。松下代表の挨拶で始まり、食の自給ネットワークの紹介、本日の趣旨などが話された。再び、司会から本日の出演者が紹介され、岩崎氏の進行でフォーラムはスタート。

岩崎氏からは現在、日本が抱える食糧自給の問題点が話された。食糧自給率が低下している日本は、世界最大の食料輸入国であり一人当たり年間 4.5 トンもの食料を輸入している現状。新農業基本法により自給率を高めようとする動きはあるが、反面、家畜の飼料などの輸入も増えていること。大量生産、大量流通、大量消費の現状と、そのために起こる長距離輸送、農薬、添加物の使用が増える事や残飯の問題。これらを解決する為に必要なのは地場流通、地場消費であり、そういう食文化を作ることである、と現状説明があり本日のフォーラムの意義を絡めて話された。

パネリストの報告

仲野満 氏
深川のりんご農家の四男坊として生まれた仲野さんは母親の苦労する姿を見てりんご農家だけはやりたくないと感じたという。その後、家族で長沼に移転。仲野さんがやりたかった大規模畑作農業を実現。しかし、りんごを裁培し、消費者との交流を大事にしている父親の様子に心を動かされる事もたびたびあった。
五年前に夢であったレストランの経営を始めた。特に地産地消という考えを持って始めた事ではない、という仲野さん。年間五万人来るお客さんは、ほとんどがリピーターだという。レストランで出す料理は地元の農産物を使い、働き手は地元採用、設備面でも地元業者を使うなど、長沼町で経済活性に貢献している。スクリーンでは自ら手がけたレストラン建設の現場写真や周辺の風景などが紹介された。
川崎克 氏
北見でスーパー「フレックス」を経営する川崎さん。食の自給ネットワークと同じように生産者・流通加工業者・消費者などで構成される「農業・健康・環境を考えるオホーツクネットワーク」の取り組みについて話された。
学校給食の関わりは九十六年より北見市内の小学校で開始。生産者と栄養士、川崎さんも加わって、より良い学校給食を目指しての学習会を重ねる。そして栄養士さんが実際に畑に行き、現場を見て試食。それを給食の材料に使うという理想的な流れが出来上がったと言う。また、加工食品としては地元の大豆を使用した豆腐の企画から販売までの事例。輸入品の 5 ~ 10 培もの価格となる道産大豆を原料とした豆腐の価格設定の工夫や、青大豆とのブレンドを試みた事等を紹介。地場小麦を使ったパンへの取り組みでは、道内いくつかの地域の学校給食でホクシン (道産小麦の名前) を 50%使用したものが出されるまで広がりを持っている。
地産地消を広げていくための流通の役割の重要さが感じられる報告であった。
黒澤信次郎 氏
乳製品の川上から川下まで (生産から消費まで) の流れについて話され、黒澤さん自身がこの日のために製作してくれた資料をスクリーンを使いながら説明された。
良質の牛乳を作る為の条件は環境、牛の血統、そして土づくりまでさかのぼり、それは循環の法則にあり、また酪農家から消費者までの牛乳の流れでは現在行われている一元集荷に大きな問題点があるという。次に乳製品の国内生産と輸入の状況では徐々に輸入が増えている事を懸念、各種乳製品の表示説明と、消費者はそれを見て本物を見極めなければならないという事など、短い時間の中で幅広い知識を与えてくれた。最後に結論として、消費者の本物追及と顔が見える関係を作る事が大事である、と言うことを強くおっしゃられた。

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地産地消に対する参加者の関心の深さと、実践している方の説得力ある報告が印象的なフォーラムだった。
3 人の報告が終わった後、再び岩崎教授にマイクが渡り、来場者から質問・意見を受け付けた。会場に集まったのは生産者、消費者、流通業者、マスコミ関係者など各分野にわたり、寄せられたものとしては、有機農産物の流通について、価格設定の事、品質の事、牛乳の流通について、また政治の分野に至るまで多数。一つの質問につき、 3 人のパネラーにそれぞれ答えを頂くなど、その質問に対して広い範囲で、そして詳しく返答がされた。時間が経つにつれ発言も増え、岩崎教授を中心に会場に一体感が出て、盛り上がってきたが終了の時間。岩崎教授が本日のパネラーの報告と、ここまでに出た質問や意見をまとめられて終了。

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