2003年度 学校給食プロジェクト

「充実させよう! 子どもたちの食育」

プロジェクトリーダー 松本 啓佑

今年度の学校給食プロジェクトには、スタッフ・オブザーバー合わせ 4 名が新たに加わりました。総勢 11 名の参加者により、食育の大切さと学校給食が果たす役割について、より一歩踏み込んで考える場を設けていきたいと思います。

昨年度までは、学習会や学校視察を通して、子どもたちの偏食や残菜の多さ、家庭における食生活の問題、そして学校給食の重要性などについて考えてきました。 その中で私たちが注目したのは、食育にとっての、担任の先生の給食指導に対する理解や子どもへの接し方による影響の大きさであり、それぞれの先生の対応によっては子どもたちの食に対する意識や給食の食べ方も違ってくるということです。

もとより、食育を担うのは学校の先生方だけではありませんが、家庭の食生活の乱れが顕著になっている現在において、学校給食を食育のための「生きた教材」として生かすには、学校の先生方の協力が絶対に欠かせません。

そこで、「充実させよう! 子どもたちの食育」 と題する市民学習会を、 6 月 28 日 (土) 午後 2 時より、 札幌市中央区北一条西九丁目のリンケージプラザにて開催します。 まず、札幌市内の学校栄養士と担任の先生のお二人から、子どもの食の現状や給食時間での実践などについて報告していただき、その後参加者のみなさんと意見交換を行います。

この学習会を、学校の先生、栄養士、調理員、保護者の方などが学校や地域の枠を超えて、学校給食を通しての食育について一緒に考える機会にしたいと思います。 会員のみなさんのご参加をお待ちしています。

『充実させよう! 子どもたちの食育』報告

プロジェクトリーダー 松本 啓佑

6 月 28 日、リンケージプラザで学校給食プロジェクトによる市民学習会を開催し、学校の先生や栄養士さんなど教育関係者をはじめ七十名以上の参加がありました。

はじめに、北海道栄養士会副会長の山際睦子先生と札幌市立東苗穂小学校教諭の畠山忠先生に、子どもの食の現状や学校給食を通した指導の実践について報告してもらった後、北海道教育大学教授の進藤貴美子先生の進行で参加者とのディスカッションを行いました。

山際先生からは「学校給食から見える子どもたちの食の現状」と題し、近年顕著になってきている子どもの不定愁訴と食生活との関わりや、親の世代の栄養摂取の偏りや痩せ願望、夜型生活などが、子どもの食生活にも様々な影響を及ぼしているという報告がありました。また、栄養士が子どもの食の問題に取り組むには給食時間の指導だけでは不十分であり、食育には担任の先生が果たす役割が大きいことを指摘されました。

続いて、畠山先生からは「食育のヒント」と題し、給食準備の指導、食事マナーの注意、おかわりのルールづくりなどの実践を紹介しながら、「給食指導とは裏の学級経営」であり、先生が給食時間も子どもたちをリードしていく必要性を説いてもらいました。また、 食べ物の好き嫌いに対しては、常に見守る子どもを決めて励まし続けることよって、学級全体へ大きな波及効果があるといった指導成果を力強く語ってくれました。

両先生の報告後、参加者からは、給食にもっと地場食材を取り入れて教材とすることや、給食だよりの工夫、給食の準備時間の短縮をといった要望が出されました。中でも大きな意見は「食育も本来は家庭で行うべき躾で、親にこそ食育が必要」ということでしたが、「親の意識を高めていくことは難しく、まずは子どもに小さなうちから自分の体や食について考える力をつけてもらうことが大事」 (山際) さらに、「家庭によっては学校が拠り所になっているような子どももいる」 (畠山) といった議論が交わされるなど、改めて家庭の食の乱れと学校での食育の重要性が浮き彫りになりました。

また、「子どもの日常の食事についても先生に把握してほしい」「懇談の席で子どもの給食での様子も話してほしい」という要望もありましたが、関心は高まってきているとはいえ、食育に積極的に取り組む先生はまだ少なく、栄養士のいる学校といない学校で先生方の食育に対する意識も違うといった現状も明らかになりました。学校の先生・栄養士・家庭がいかに連携をとるか、そして「あまり食に関心のない保護者にどうやって呼びかけていくか」 (山際) という課題に、参加者それぞれが自分の家庭や学校、地域に持ち帰って取り組んでほしいと思います。その意味で、今回参加してくれた 30 名の「先生の卵」 (教育大の学生さんたち) はとても頼もしい存在です。進藤先生も最後におっしゃったように、「食のあり方について、理屈だけでなく生活の中で実践できる」そんな先生に育ってほしいと思います。若い芽に期待。

学校給食から見える子どもの食の現状


北海道栄養士会 副会長・管理栄養士/ 山際睦子先生

食育のヒント


札幌市立東苗穂小学校教諭/ 畠山忠先生

ディスカッション


コーディネータ : 北海道教育大学教育学部教授/ 進藤貴美子先生

装い新たに

プロジェクトリーダー 松本 啓佑

昨年の 11 月と 12 月に、スタッフによる会合を開き、来年度よりプロジェクトを「食育プロジェクト」と改称し、再出発することが決まりました。

今日、様々な方面から「食育」が求められるようになっています。本プロジェクトは、これまで主に学校給食を媒介として子どもたちの食の問題に接し、学校関係者も含めて対応について話し合ってきました。その中で、学校給食が食育にとって重要な場であることの裏返しとして、家庭や地域の教育力の低下といった問題も明らかになりました。この問題に対峙していくために、プロジェクトの活動対象を一つに限定せず、家庭・学校・地域が連携しての食育に向けたネットワークづくりや、実践に取り組んでいきます。

現在、最初の企画として、プロジェクトのスタッフが中心になり、子どもたちに「食と健康」や「調理技術」「食と農の関係」などを、実際の体験を通して学んでもらう「食育講座」を準備中です。詳細については、追って総会や次号で報告いたします。

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