2000年度 学校給食プロジェクト

学習会報告

9 月 28 日、北海道教育文化会館にて学校給食プロジェクトによる学習会が開かれました。今回は、北海道で最大の規模になっている札幌市の学校給食の現状を、学校健康教育栄養士協議会会長の山際睦子さんのお話しを聞くかたちで行われました。学校給食の問題は、家庭での食の問題だということが分かりやすく指摘されました。

「小学校では、お弁当持参の日があるのですけれど、手作りお弁当を持参する子は全体の 10%程度ですよ。コンビニ弁当をそのまま持ってくる子もいます」「運動会にお寿司の出前が来る時代です」「給食時間の中で、実際に給食を食べている時間は、短いときですと五分間しかない」……。次々と参加者が驚くような現状報告が続きました。

山際さんは、お話しのなかで「学校給食に過剰な期待が家庭からきていて当惑しています」「給食は、多いときでも年間 195 回しかないのです。 365 日の食事の大半は家庭なのです」「子供にとって、今のうちから食に関する指導をすることが大事なのです」「そのため、給食の内容に日本食を増やしている。それは家庭の食から日本食が減っているためです」「子供が大きくなったとき、今の親のようにならない工夫が必要になっている」…… と、強調されました。

さらに札幌市の学校給食の 18 万食というスケールは、北海道全体の半分以上にもあたる量になるため、こだわりの素材を使いたくても、供給が間に合わないというのが現状。そのことについて参加者からは、もっと学校単位での独自の調達があったら可能になっていくのでは、との意見がありました。

学校独自の取り組みとしては、総合学習の活用というかたちであれば可能だとのこと。山際さんの担当している小学校では、総合学習ということで、地元の農家と畑の契約をして、児童の体験学習の場として農作業を経験させ、収穫した野菜を使って給食を組み立てる工夫をしているそうです。

子供たちが、どのように給食を食べているのかを確認しているので、山際さん自身の昼食は 2 時ころになってしまうとか。知育、体育、食育の三本の柱が揃って本来の教育ということになるそうですけれど、現状では、知育を優先する傾向が強いそうです。そのなかで、栄養士さんたちは、子供たちの将来を考えていろいろな工夫をしている現場の報告を聞くことができました。地域と学校との連携が、学校給食と自給の関係を発展させる大事なカギだということを感じ取ることができました。

学校給食試食ツアー

学校給食プロジェクトは、「地場産物の学校給食への使用拡大を目指し、学校給食の意義と役割を広く伝える」ことを目標としています。今回は現状調査の手始めとして石狩市の 2 つの給食センターの見学と試食会を行いました。

現状調査…実は「見たい、食べたい」まるでどこかの広告文のように単純な動機で参加しました。が、帰りにはお腹より頭がいっぱいになってしまいました。 (さすがに食の自給ネットワークですね!) 。

石狩市では二つの学校給食センターで小・中学校十四校分の副食 (主食のごはん・パンなどは業者委託) を作っています。いちばん関心がある地場産物については、ごはんは週三回 (札幌市は二回) で石狩産米、ほか人参、大根などの野菜十二種類が石狩産だそうですが、やはり冬は本州産のものが主になるようです。

その他、化学調味料などの添加物を使用していない食材を使ったり、遺伝子組み換え食品はできる限り避けているなど、食品の安全性についても努力されていました。けれども衛生上の問題から土付きで入荷するのはじゃが芋のみで、ごぼうなどは刻んだものをパックで入荷するなどということでした。有機野菜のように規格が均一でないものも、作業の効率から取扱えないようでした。 (虫がいるかもしれない、などはとんでもない事のようで、ほうれん草などは葉の 1 枚 1 枚を見て調べるそうです。そんなことをしている主婦がいるでしょうか?)

栄養士の方は、洋食よりは和食、手作りの味など考えて献立を作っていらっしゃいました。でも子供達は魚よりは肉、薄味よりは刺激の強い濃い味を好み、和食にすると残菜が多いとの事でした。 TV や雑誌ではあんなに和食は身体に良いと言っているのに (のせられ易い国民性を考えると不思議ですが) やはり家庭での食習慣が問題だと思えます。家庭の回りには社会環境があって、コンビニ、スーパーの惣菜、ファーストフード…時代は飽食から放食だそうですが、いい大人がこれではなんだかとっても情けない、だから食べたくもない遺伝子組み換え食品を買わされてしまうんですよね。でもいつでも希望は残っているもので、若葉小学校では先生が「おいしいよ」など声かけをすることで、子供達が食べるようになり、残菜がとても少ないのだそうです。科目の勉強ばかりでなく、生きていくのに一番基本的な「食べる」ことの教育がもっと大切にされるべきだと感じました。

価格と効率はどんな事柄にもついて回るものですが、学校給食についてもそれが正しく考えられているでしょうか?

石狩市では強化磁器で、見た目も持った感じもステンレスなどよりはずつと良いのですが、調理員の方には重たくて扱うのは大変な労働で身体を痛めたりするのだそうです。食器洗いには、合成洗剤より安全で安価なせっけんが使われていますが、やはり労働は増えるそうです。一日のスケジュールが分刻みで決められている中で、せっかく栄養士さんが考えた献立も「できない」ことになってしまったりするのは、労働のきつさを考えると無理もないとうなずけるけれど、自治体はそれをなんとかできないのか? 野菜は本来不揃いなものなのに、それじゃ使えないというのも分かったような分からないような…。

子供達の食生活を考える事は、社会の将来を考えることと言ったら大げさすぎるでしょうか? 本当にいろんな事を知ったり、考えたりするきっかけになった試食ツアーでした。

心良く御協力下さった石狩市の学校給食センターの方々にとても感謝しています。

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