食の自給フォーラム 2004

「激論 こんな北海道にしたい!~若手担い手が語るこれからの北海道の食と農~」

運営委員 松本 啓佑

2004 年 2 月 14 日、札幌市教育文化会館において、「食の自給フォーラム」 が開催された。

パネルディスカッションの要旨

はじめに、「食と農」の観点から活動している 5 名のパネラーが、それぞれの取り組みと北海道の将来像および課題について報告した。続いて、上野次子コーディネーターの進行のもと、参加者との意見交換が行われた。以下、発言の要旨をまとめる (発言順) 。

【上野次子さん-北海道中央農業試験場主任専門技術員-】

不況の中で、一人一人が生き方や社会のシステムを見直す必要がある。近年、「食」では食品の安全性に対する不安や、食生活の乱れが顕著であり、また、「農」では農家戸数の減少や低い自給率が問題になっている。このような中、農村、都市、製造業、行政それぞれの立場で活動している、若いパネラーと会場の皆で一緒に考えたい。このような取り組みが、歩みは小さくとも一人一人が考え、行動することで大きな流れとなると思う。
【小倉義満さん-小樽素菜亭お蔵代表-】

道内産の原料を使って、「蒸気まん」など様々な加工食品を、添加物を一切使わずに製造している。以前の会社では産地や安全性には配慮せず、量だけを追求した仕事をしていたが、地元の北海道の農産物を使った食品を、道外の人にも食べてもらおうと食品加工の会社を興した。

原料の確保や保存法など苦労も多いが、今後は、さらに家庭で作るような味のお菓子を製造ラインに乗せ、生産者と一緒に真面目に作った商品を全国に流通させていきたい。
【米田 香さん-札幌市立高等専門学校研究員-】

オーストラリアで、農業を基盤とした循環型の生活や環境を創る「パーマカルチャー」というデザイン体系を勉強し、人と食べ物、自然のつながりを実感した。

消費者は、食の問題を考える際、身体や健康への影響だけでなく、食べ物が運ばれてくる距離や、容器・包装などによる環境負荷や、食べ物がどのように作られて食卓に上るのかということにも関心を持つべき。身近なことから、資源やエネルギーの消費を控え、環境にやさしい暮らし方や、そういった農業をきちんと評価し応援していきたい。
【押田志穂さん-下川町 食彩工房・美花夢-】

実家が酪農家で、自然豊かな場所で育ち、見晴らしのよい自分の家に「安らげる場所を作ろう」と思った。家族と一緒に、憩いの空間と工房を作り、牧場の牛乳を使ったチーズやケーキ、天然酵母のパンを作って販売するお店を経営している。家族だけでは労力的な問題があり、販売方法、原料確保など課題も多い。今後は、お菓子作りの技術を身につけ、農業体験や講習会など子どもたちに農業の大切さや魅力を伝えたい。
【小路健男さん-追分町 農場・無可有の郷-】

「調和のできる農業」を目指し、新規就農で有機農業を始めて十四年になる。現在は養鶏と畑作物が経営の柱である。これまで販売は産直と有機専門の流通団体が中心だったが、近年の有機認証制度を契機に仲間と有機農協を設立し、直売店の営業も始めた。今後は自ら加工にも取り組みたい。

れからの北海道に必要なキーワードは「依存から自立へ」。そのためには我々の思いを発信することと、「理念」と「経済」両方を併用させて進めていくことが重要。
【横田喜美子さん-北海道農政部道産食品安全室-】

パネラーの方々の話は「効率や規模」に関することではなく、「安全・安心、環境、品質、結びつき」であり、当室が推進しようとする姿と合致していて勇気づけられた。

現在、遺伝子組み換え作物の栽培規制と、北海道らしい「食の条例」づくりが目下の課題であるが、消費者の視点に立つという立場からも、消費者の方からたくさんの声を上げてほしい。

会場との意見交換より

【会場】
有機農業など、環境に配慮した生産や流通への支援をどう行うのか。
【横田】
有機農業ついては、先行団体と協力して推進したい。今後、消費者がどういう食べ物を選択し、農業者がそれにどう応えるかが、どういった農業が主流になるかの決め手となろう。
【会場】
大多数の農家の意識を、環境などへ向けていくにはどうしたらよいか。
【小路】
有機以外の農家が多数なのは事実だが、消費者の意識・動向が変われば、流通や農家も自然との調和や共存を重視するようになると思う。
【会場】
パーマカルチャーに取り組んでいるのはどんな農家か。また、農業は成り立つのか。
【米田】
パーマカルチャーは農法や経営のことではなく、暮らし方のこと。暮らしに「農的」な要素を取り込むことで、食べ物を自給や資源の循環につなげることが大事。
【会場】
遺伝子組み換え作物の是非について、パネラーそれぞれの考えを聞きたい。
【小倉】
BSE や鳥インフルエンザなどの問題と同じく、不安な状況の中で使うことはしない。
【米田】
自家採種のことを勉強したが、食べ物の源である種を汚染する技術は許せないと思う。
【押田】
そういう技術の開発に費やす時間や労力を、農業者の自立や環境のために使うべき。
【小路】
日本や北海道では、導入せずとも生産できる。急いで導入する必要性は感じられない。
【横田】
企業の技術独占は問題。飢餓問題に対しては、別の解決アプローチも模索されるべき。
【上野】
会場にいる若者の意見も聞きたい。
【学生男】
同世代に向けて、土に触れるなど、「食と農」に積極的に関わる生活を提案したい。
【学生女】
教育実習で子どもの食の危険な状況を目にした。給食や授業で食育に取り組みたい。

総括

今回の参加者は 120 名程度と、例年に比べやや少ない入りだったものの、会場全体を巻き込んでの熱のこもった討論が展開され、会場は大いに沸いた。「こんな北海道にしたい」という壮大なテーマであったが、若手の担い手が主役となり、環境に配慮した循環型の生産・消費、生き方を目指す方向性が提起された。このフォーラムにとどまらず、今後も若者による様々な模索と発信が求められる。

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