『肉牛と乳牛のアニマルウェルフェア』

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2月23日に帯広畜産大学准教授の瀬尾哲也氏から肉牛と乳牛のアニマルウェルフェアについてお話を聞きました。26名の参加でした。
肉牛は和牛とアンガスなどの外国種とホルスタインやジャージー、ブラウンスイスなどの乳用種のオス、F1と呼ばれるホルスタインと黒毛和種の交雑種がある。和牛には黒毛和種、褐毛和種、日本短角、無角和種がある。繁殖牛と肥育牛があり、繁殖牛は生後24か月ころから出産する。人工授精して約280日で出産、10歳ころまで約7産させる。肥育牛は稲わらや牧草などの粗飼料と濃厚飼料で、20か月~30か月齢750㎏くらいまで育て出荷、屠畜される。690㎏の牛からおよそ228㎏の肉がとれる。検査後肉質による格付けがされるが採れる肉の量が多い順にA~C、さし肉のしまりで1~5のランクがつく。白い霜降りが多いほど高評価になり値段も高くなる。TVのグルメ番組などでよく言われる「A5」の肉はおいしさの基準ではない。白い脂肪を入りやすくするためにビタミンAを制限する飼い方をするところもあるが、ビタミンAが不足すると目が悪くなったり足が腫れたりすることもあり、アニマルウェルフェア認証基準では「ビタミンAの制限はしない」としている。また濃厚飼料を多投すると胃腸炎や肝炎などの消化器病にかかることがある。放牧して草を食べると脂が黄色くなり、サシも少なくなるため、肥育牛は放牧やパドック(運動場)に出すことはほとんどないのが現状。

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肉牛のアニマルウェルフェア認証始めている。審査項目として、皮膚病がない(ブラシ設置するかブラッシングをする)人に慣れている、去勢は5か月までに実施、1日6時間以上運動させる、角が伸びる前に焼く「除角」は2か月まで、水槽の清潔さ、削蹄しているか、1頭当たりの広さ、分娩房の環境などがある。

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瀬尾先生に質問もいくつかありました。
Q「JGAP(日本における適正農業規範)の中にアニマルウェルフェア認証もあるが基準が甘すぎ、認証取れるところがあってもEUなどには受け入れられない。オリンピックでも実態解れば拒否されるだろう。アニマルウェルフェア(AW)畜産協会の認証はいかがか?」
A「AW畜産協会の基準はJGAPより厳しい。項目を8割クリアすれば認証しているが10割クリアでグローバルGAP(農業生産工程管理の国際的な基準)並みになる。」
Q「ビタミンAを抜いた飼料が流通している現状でビタミンAをいれるためにはどうしたらいい?」
A「粗飼料や単品飼料で作る。」
Q「オリンピック後のAWの需要はどうか?」
A「落ち込むだろうが消費者の関心高めていくことがたいせつ。」
Q「EUで厳しい基準が通用しているのはなぜ?」
A「消費者の目、流通の仕組み、法律の後押しなどあるが、そもそも動物をつないで飼うことに対する嫌悪感がある。」
商品の向こう側の見えない世界を見る努力をするためにも学びが必要と感じました。
質疑応答の後で「家畜の生活ってどんな感じ?ちょっと体験してみましょう」ということで一般的な養鶏場での鶏1羽分のスペースの箱を見てもらいました。また体長約2mの牛1頭の飼育スペースがおよそ2㎡なので、人間に換算して165㎝の身長の人に畳1枚分のスペース(1.65㎡)として用意した紙の上に寝転んでもらいました。また鶏の羽を模したものを付けてもらい手を伸ばせない窮屈さを体感していただきました。

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鶏1羽分のスペースの箱と羽を付けた高校生

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参加した方のアンケートの一部を紹介します。
「初めてお話を聞いたので大変勉強になりました。現状の日本の農家ではコストは上がるし牛の価格は下がるので普及には課題が多く感じました。日本国内での意識のありようが難しいと思います。」
「人口が減っている中での農家さんの負担、ビタミンAを削り、最高の不健康状態で出荷されていることを消費者はどこまで知っているのか。TPPで将来輸入牛が増える見込みの中で、国産牛との差別化を牛肉に行える道、政府の支援制度が必要ではないか。」
「何度か参加させていただいてますがまだまだ知らない事ばかりで勉強になりました。まだまだアニマルウェルフェアについては知らない方が多いと思いますので少しでもお知らせできるといいなと思いました。」
「霜降り増やすためにエサのビタミンAを制限していることにびっくりしました。」
「スーパーなどでアニマルウェルフェア認証商品が普通に買える日が来るのを願いつつもっともっと世間に知ってもらえたらと思います。あとA5の本当の意味を知って今までA5の肉に騒いでいた自分が恥ずかしかったです。」
「アニマルウェルフェアの認証を受けた牛乳と他の牛乳が混ざって売られていることに今日は一番ショックを受けました。何か別な方法を考えて別なものとして販売する方法や生産者の方の思いが簡単に伝えられる仕組みなど何か良い方法が見つかってほしいです。」
「貴重なお話をありがとうございました。活発な意見交換されていることに感心しました。今後も生産現場の理解につながる活動を続けてほしいと思いました。」
「今日の学習会を通してアニマルウェルフェアの知識を得ることができました。自分たちもアニマルウェルフェアの認証を高校牛舎でとりたいと考えていて、このような機会に話を聞けて良かったです。」
「日本人の意識、関心をどう変えていくか考えていく必要がある。」

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