あにふく(アニマルウェルフェア)学習会 2018年3月4日

『聞いて・考えて・話して・深めよう!~幸せな牛の育つ環境について~』

幸せな牛の育つ環境と認証製品について
3月4日の学習会は乳牛のアニマルウェルフェアをテーマに開催し、21名が参加しました。

左から司会の小池さん、佐竹さん、瀬尾先生

左から司会の小池さん、佐竹さん、瀬尾先生

初めに旭川で放牧酪農を行う「クリーマリー農夢」の佐竹秀樹さんからお話を伺いました。

放牧地7haで9頭の乳牛を飼育している。出入り自由な牛舎は土に乾草を敷き詰め、通路はコンクリートにゴムマットを敷いている。壁は透明にして通風の工夫もしている。春は牛たちがササを食べるので刈り払う手間が不要となり助かっている。搾乳場所と寝る場所、食べる場所は別にしている。近所の農家から無農薬のカボチャをチーズと交換でいただき、ナタで小さく割って食べさせたりするが、基本は乾草を好きなだけ食べさせている。乾草は毎年120ロール購入している。牛は春から夏は放牧地で出産をし、真冬でも牛舎裏のパドックに出て行って日向ぼっこをしている。北海道では平均3産で屠畜されるが、うちは12歳7産の牛もいる。

学生時代畜産を学ぶ中でルース・ハリスンの著書「アニマル・マシーン」と出合い、飼い方で製品が変わることを知った。家畜も生き物だから自由に飼ってあげねばと思いオーストラリアの牧場に就職した。そこは配合飼料を与えず草を食べさせ、平均乳量は年3000ℓほどだったが、低収入でも経営は持続的な牧場だった。生菌数少ないのが当たり前とオーストラリアで学んだ。

クリーマリー農夢ではNON-GMの配合飼料と乾草を与え乳量は年7200ℓほど。生菌数少なく無殺菌でも飲めるくらいだが低温殺菌している。平成7年3月から牛乳の早朝宅配を始めた。900㎖300円(ビン代別)で販売したら3か月で大赤字になり、すぐ値上げした。今は390円で販売している。牛乳の風味は季節や個体によって異なる。小規模なので手間をかけられるのが強みと考えている。アニマルウェルフェアは当たり前のことと思っているが、消費者が理解し適正価格で購入してくれたら心豊かになる。草地拡大、飼料自給化については次世代に託したい。

 

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次に帯広畜産大学畜産学部講師で(一社)アニマルウェルフェア畜産協会代表理事の瀬尾哲也先生からお話をお聞きしました。

乳牛は子を産まないと乳を出さないので1年に1産させ10か月乳を取り2か月休むの繰り返し。

北海道は放牧のイメージが強いが、家畜はほとんど舎飼いで牛舎も「つなぎ飼い」が約70%と一般的。これは管理しやすいからで、牛はトイレの場所が決まっていないので糞の始末が大変だが、つなぎ飼いだと糞が決まった場所に落ちる。ただ牛の体が大きくなってきている割に牛舎は簡単に建て替えられないので、牛にとっては狭いところもある。「放し飼い(フリーストール)」では糞尿がたまった場所を牛が歩き足の病気になることがある。

人間も家畜も生き物はすべて死ぬ。人間であれば「どうせ死ぬのだからどんな環境でもいいだろう」とはならない。家畜も感覚を持った生き物で快適に生きる権利がある。生まれてから屠殺まで幸せに、できるだけストレスを抑えた飼育をすべきというのがアニマルウェルフェアの考え方で、客観的、科学的に動物の立場で快適性をとらえている。農業に補助金は多くつぎ込まれていて、多く出荷したり、設備投資すれば補助金がもらえる。アニマルウェルフェアもメリットがないと取り組みが進まない。

アニマルウェルフェア畜産協会では乳牛の認証基準を作って、「動物」「施設」「管理」の各ベースで8割クリアしたところを認証している。2017年度認証を取った牧場は6か所。基準については、例えば「動物」ベースでは、病傷事故頭数被害率や死廃事故頭数被害率を調べたり、人が近づいて早くから逃げるのは牛が人に恐怖心を持っていると解釈できるなど。「施設」ベースではカウトレーナー(牛が糞をするとき背中を丸めるが、その背中が当たるあたりに微弱な電流を流し、牛がそれを嫌って1歩後退するとトイレに糞尿が落ちる仕組み)は全面禁止とはせずに、牛舎の清潔のため、やむを得ない場合には認めることもある。牛1頭当たりの牛床は1.1以上などと舎飼いも十分な広さがあれば認められる。放牧では飲水施設、日陰が必須で、木で体をかく擦り付けができるかも見ている。断尾は禁止、除角は生後4週間以内に焼くなどストレスの少ない方法で行うなど、全部で52項目設定している。

生産性を拡大するだけでは持続的ではない。牛に優しくしたら乳量が少しだけ増えたというデータもある。消費者はぜひ自分の望む作り手とつながってほしい。アニマルウェルフェアの消費者にとってのメリットは信頼できるものを入手できる。生産者にとっては病気発生が減る。乳価が上がるとなれば取り組みも増えると思う。

 

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お二人の話の後はクリーマリー農夢のアニマルウェルフェア認証牛乳の試飲をしながらフリートークを行いました。

Q「EUのアニマルウェルフェアの基準と比べたら甘くないか?」
A「今のアニマルウェルフェアの知名度ではまず取り組みやすい基準にしている。オリンピックの為ではない。」

Q給食にアニマルウェルフェアの牛乳を入れてほしいが?」
A「給食の牛乳の値段は安いので難しいと思われる。」

また佐竹さんには長期的展望持って頑張ってほしいとエールもよせられました。

アンケートでは
「アニマルウェルフェアの考え方が自分の中で整理できました。ありがとうございました。佐竹さんの牛乳とてもおいしかったです。これからの活動応援しています。」

「アニマルウェルフェアの事は知っていましたが現在の農家の現状との差に驚きました。牛乳、娘の学校の給食試食会で数年前に飲んだら臭くて最後まで飲めず嫌いになっていましたが、今日の佐竹さんの牛乳はすごくおいしかったです!!」

「少しずつですがアニマルウェルフェアの事が世の中の方に知っていただけているように感じています。でももっとたくさんの方に伝わるようになればいいなと思います。」

「牛への丁寧な世話や管理のアニマルウェルフェアの認証基準を解りやすく説明していただきよかった。多くの酪農家さんに大変と思いますが食の安全にかかわることなので実施してほしいです。購入する方も勉強して認証制度のシールが貼ってある製品を買いたいと思います。」

「以前佐竹さんの牧場に行った時、『生まれ変わったらここの牛になりたい』と言った瀬尾先生の言葉が忘れられません。」

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